「2024年問題」のその後輸送力不足の見通しは「約34%」から「7〜25%」に
時間外上限年960時間の適用から2年半。2026年4月に始まった物流効率化法の義務と、これからの日程
トラック・バス・タクシーの運転の仕事に、時間外労働の上限(年960時間)と新しい改善基準告示が適用されて2年半がたつ。国土交通省は2026年3月、2030年度の輸送力不足の見通しを、当初の約34%から「平均で約7%〜最大で約25%」に改めた。この間に何が決まり、これから何が始まるのかを、施行日とともにまとめる。
一2024年4月1日に変わったこと
「2024年問題」は、2024年4月1日からトラック・バス・タクシーなど自動車運転の業務に、時間外労働の上限が適用されたことを指す。特別条項付きの36協定を結んでも、時間外労働は年960時間まで。一般の業種にある「単月100時間未満」「複数月平均80時間以内」「月45時間超は年6か月まで」の規制は、運転の業務には適用されない。
同じ日に、厚生労働省の「改善基準告示」も改正された。トラックの拘束時間(始業から終業まで、休憩を含む時間)は、1年で3,516時間から原則3,300時間に、1か月で293時間から原則284時間に短くなった。勤務と勤務の間の休息期間は「継続8時間以上」から「継続11時間を基本とし、9時間を下回らない」になった。
バスは1か月の拘束時間が原則281時間以内、タクシーは日勤で月288時間以内(改正前は299時間)、隔日勤務で月262時間以内。休息期間もバス・タクシーの日勤で継続11時間が基本、隔日勤務は継続24時間が基本となった。
| 項目 | 2024年3月まで | 2024年4月から |
|---|---|---|
| 1年の拘束時間 | 3,516時間 | 原則3,300時間(労使協定で3,400時間) |
| 1か月の拘束時間 | 293時間(協定で年6か月まで320時間) | 原則284時間(協定で310時間、年6か月まで) |
| 1日の拘束時間 | 13時間(上限16時間) | 13時間以内(上限15時間。14時間超は週2回までが目安) |
| 1日の休息期間 | 継続8時間以上 | 継続11時間を基本とし、9時間を下回らない |
| 運転時間 | — | 2日平均で1日9時間、2週平均で1週44時間以内 |
| 連続運転時間 | — | 4時間以内(中断時は原則休憩、合計30分以上) |
出典: 厚生労働省「トラック運転者の改善基準告示」(自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト)。宿泊を伴う長距離運行(1運行450km以上)などには別の扱いがある。
二輸送力不足の見通しは「7〜25%」に
上限の適用前には、2030年度に輸送力が約34%不足するという想定が示されていた。国土交通省は2026年3月31日に閣議決定した総合物流施策大綱(2026〜2030年度)の検討で、この見通しを改めた。
国交省の検討会の提言案によると、約34%のうち約14%分は「2024年問題」への対策の成果などで概ね克服した(輸送需要も約12%減った)とした。そのうえで再検証すると、2030年度には平均で約7%、最大で約25%(1.7億〜7.2億トン)の輸送力不足がありうるという。対策として、荷待ち・荷役時間の短縮(+7.5ポイント)、積載効率の向上(+6.6ポイント)、新たなモーダルシフト(+6.4ポイント)などで計25.7ポイントの効果を見込む。
「不足が減った」とはいえ、最大で4分の1近い輸送力が足りなくなる可能性が残る、という見通しだ。古い「34%」の数字は、すでに更新されていることに注意したい。
- 当初の想定(2023年ごろ)約34%
- 再検証・最大(2026年)約25%
- 再検証・平均(2026年)約7%
出典: 国土交通省「2030年度に想定される輸送力不足への対応方針(提言案)」、同 報道発表「総合物流施策大綱(2026年度〜2030年度)を閣議決定」(2026年3月31日)。
三荷待ちは「1運行2時間以内」へ
ドライバーの長い拘束時間の原因の一つが、荷主の倉庫や工場での「荷待ち」だ。荷主の都合で30分以上待った場合は、乗務記録に書くことが2017年7月から義務になっている。
政府は、全国のトラック輸送の5割の運行で、1運行の荷待ち・荷役などの時間を計2時間以内(1回の受け渡しごとに原則1時間以内)にする目標を掲げ、2025年4月から荷主・物流事業者の判断基準として施行した。運賃の面では、国交省の「標準的な運賃」と比べて概ね受け取れている契約の割合が、2021年度調査の35%から2024年度調査では53%になった(全日本トラック協会・国交省の資料)。
四2026年4月、荷主にも義務
2026年4月1日からは、改正物流効率化法の第2段階が始まった。一定規模以上の荷主(年間の取扱貨物9万トン以上)やトラック事業者(保有車両150両以上)、倉庫業者(保管量70万トン以上)などを「特定事業者」に指定し、中長期計画の作成と定期報告を義務づけた。特定荷主には、物流を統括する「物流統括管理者(CLO)」の選任が求められる。
2025年6月11日に公布された「トラック適正化二法」も段階的に動く。2026年4月には、違法な白ナンバートラック(白トラ)を使う荷主などへの規制や、委託の次数を2次までに抑える努力義務が始まった。トラック事業の許可を5年ごとの更新制にすることや、「適正原価」を下回る運賃・料金を制限することは、公布後3年以内に施行される予定だ。
五バスとタクシーの現場では
バスでは運転者不足による減便が広がる。関東運輸局が管内の路線バスがある市区町村(282)に聞いた調査(2025年3月報告)では、2021年4月〜2024年12月に減便・廃止された系統がある自治体が65.6%。減便・廃止の要因に「運転者不足」を挙げた割合は、2023年度の63.9%から、2024年4月以降は85.4%に上がった。関東だけの調査で、全国の値ではない。日本バス協会は2023年10月、2030年度に運転者が約3.6万人(28%)不足すると試算している。
タクシーは回復の兆しがある。国土交通省調べ(全国ハイヤー・タクシー連合会の資料)では、法人タクシーの運転者は2009年度の37万1,245人から減り続けたが、2022年度の21万4,972人を底に2年連続で増え、2024年度は22万4,428人だった。
- 2024年4月1日時間外上限 年960時間、改正改善基準告示(トラック・バス・タクシー)
- 2025年4月1日改正物流効率化法:荷主・物流事業者に荷待ち短縮・積載率向上の努力義務。改正貨物自動車運送事業法:書面交付、実運送体制管理簿など
- 2026年3月31日総合物流施策大綱(2026〜2030年度)を閣議決定
- 2026年4月1日物流効率化法の特定事業者に中長期計画・定期報告、特定荷主にCLO選任。トラック適正化二法の第1段階
- 2027年4月1日予定AT大型免許の導入(警察庁)
- 2028年6月まで予定トラック事業の許可更新制、「適正原価」を下回る運賃の制限(公布後3年以内に施行)
出典: 厚生労働省、国土交通省「物流効率化法について」「トラック適正化二法について」、同 報道発表(2026年3月31日)、警察庁。「2028年6月まで」は公布日(2025年6月11日)から3年以内という期限を本紙が日付に直したもので、具体的な施行日は未定。
出典
- 建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制
- トラック運転者の改善基準告示
- バス運転者の改善基準告示
- ハイヤー・タクシー運転者の改善基準告示
- 「総合物流施策大綱(2026年度〜2030年度)」を閣議決定
- 2030年度に想定される輸送力不足への対応方針(総合物流施策大綱に関する検討会 提言案)
- 日本のトラック輸送産業 現状と課題 2025
- 自動車運送業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針
- 物流効率化法について(荷主・物流事業者の皆様へ)
- トラック適正化二法について
- 関東運輸局管内におけるバス運転者不足問題を踏まえた地域公共交通の確保維持に関する調査
- 国土幹線道路部会ヒアリング資料「バス運転者の推移及び今後の不足見込みについて」
- 運転者数の推移(法人タクシーに限る。資料: 国土交通省調べ)
取得日はいずれも2026年9月25日。年収換算は「きまって支給する現金給与額×12+年間賞与」で本紙が計算した推計値です。制度の内容は変わることがあります。手続きの前に、各機関の最新の案内を確認してください。
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